A Gentleman's Wisdom

Yoshimi Hasegawa 長谷川 喜美
Life Style & Fashion

The Oldest Coffee House in London

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The Jamaica Wine House in St.Michael’s Alley , London

ロンドンには至る所に、現代と過去を繋ぐ鍵が遺されている。

金融街シティの象徴であるイングランド銀行からほど近いセント・マイケル・アリー。この路地裏の一角に、1652年、ロンドン最初のコーヒー・ハウス「パスカ・ロゼズ・ヘッド」が開業した。

ロンドン最古のコーヒー・ハウスであったその場所には、この事実を記すサインボードが現在も誇らしげに飾られている。近代的に移り変わるシティの景観の中で、ここだけが創業当時の佇まいを残す貴重な場所だ。

現在は1698年創業のイギリス最古のビール醸造所「シェファード・ニーム」が所有し、パブ「ジャマイカ・ワイン・ハウス」として営業されている。赤煉瓦作りのこの建物は1869年に建てられ、高い天井やバーカウンターには当時のヴィクトリアン時代の意匠がそのまま残されている。

興味深いことに経営者のパスカ・ロゼ―はイギリス人ではなく、貿易商であったダニエル・エドワーズがトルコより連れ帰った人物で、アルメニア人、またはギリシャ人だったと言われている。当初、ロゼ―がエドワーズに個人的に淹れていたコーヒーが評判となり、エドワーズの許可を得てコーンヒルに店を構えたことから、ロンドンのコーヒー・ハウスの歴史は始まったのだ。誕生当初は健康飲料であったコーヒーが17世紀のイギリスに広く大衆に普及した背景には、コーヒー・ハウスが果たした役割が大きい。

コーヒー・ハウスでは飲酒・賭博・女性の立ち入りが禁止されていたが、誰でもコーヒー1杯1ペニーと入場料の1ペニーを支払えば、原則として階級・身分の差なく出入りできる場所だった。このことからもコーヒー・ハウスが、一般大衆に開かれた場所「パブリック・ハウス」の略語である「パブ」の前身となったことが推察できるだろう。

同好の士が集まるサロンともいった文化的役割から、同業者が集まるギルドとしての商業的役割、トーリ―&ウィッグスのイギリス二大政党が集まるといったような政治的役割に至るまで、当初は誰もが気軽にコーヒーを楽しむ場所であったコーヒー・ハウスは、その立地、集まる顧客などによる選別化が行われ、それぞれの店が異なる個々の性格と役割を次第に備えるようになっていった。

むしろ、17世紀のコーヒー・ハウスが担っていた文化的・政治的役割をそのまま継承したのが18世紀に端を発するパブとジェントルメンズ・クラブなのである。

同時にコーヒーハウス衰退の原因となったのは、その後に登場したティールームの存在が大きく影響している。前述のようにコーヒーハウスは女人禁制であったが、ティールームは男女の区別無く、むしろ女性に喜ばれる場所であったのだ。こうしてヴィクトリア時代の中間富裕層の拡大に伴って、男女共存を許した紅茶文化は隆盛を迎え、ロンドンの女人禁制のコーヒー文化は幕を閉じた。

この事実が示すように、今も昔も女性の統治者を許容する国イギリスでは、女性の力は実は強大なものだった。この国に今も生きている「ジェントルメン」という美しい概念は、その動かしがたい勢力に対する責めてもの抵抗のようにも思われる。

(出典: yoshimihasegawa.com)

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